立憲民主党JR二島貨物問題検討ワーキングチーム(WT)は11日、JR北海道・JR四国・JR貨物の3社に対する今後の支援に関する要望書を国民民主党と合同で国土交通省に提出しました。この要望書は、JR3社の経営自立を図るためにも、政府が中長期的視点に立った鉄道政策を実行していくことが必要不可欠であるとの観点に立っています。立憲民主党からは、JR二島貨物問題検討WTの荒井聰顧問、矢上雅義座長、道下大樹事務局長、森屋隆事務局次長が参加し、鳩山二郎国土交通大臣政務官に要望書を手交しました。
1987年にJRが発足してから今年で33年目。当時実施された国鉄改革の目的は、JR各社が自主性を持った経営を通じて、鉄道の再生と発展を図ることでした。その結果、JR本州3社に加えJR九州が株式上場・完全民営化を果たす一方で、経営基盤の脆弱なJR二島(北海道・四国)及びJR貨物については、累次に亘る支援を受けつつも、未だ経営自立の見通しが立っていません。
このような状況の中、世界中で蔓延している新型コロナウイルス感染症の拡大によって、移動自粛の流れや「新しい生活様式」が定着。JRをはじめとする公共交通の利用が急減、低迷し、JR各社の2020年度中間決算は、過去最大の赤字を計上するなど、未曾有の難局を迎えています。特にJR北海道やJR四国については、これまで国土交通大臣からの監督命令・行政指導を受け、2031年度の経営自立を目指してきました。ところがコロナ禍の今では、融資枠確保などによりかろうじて資金ショートといった事態は避けられているものの、一層困難な状況に陥っているのが現状です。またこうした経営状況の悪化に伴い、人材の流出にも歯止めがかかっていません。人材基盤の劣化に伴い、鉄道の安全運行への影響すら懸念されています。
こうした状況がある一方で、カーボンニュートラル社会実現のために、人の移動・物流を担う鉄道の必要性・重要性は、逆に世界的に高まっています。今後、地域を支える各交通モードが連携し、持続可能な交通体系を構築したり、働く人たちが希望を持ち、安心して働き続けられる環境を築いていかなくてはなりません。当該3社がそれぞれ経営自立を実現するためには、将来を見据えた議論と、中長期的視点に立脚した政策の実施が必要不可欠です。
次期通常国会においては、国鉄債務等処理法改正を含む国会審議が想定されています。しかし2021年度以降の支援措置は、本年6月にも要望した内容を踏まえ、単なる弥縫策に留まらず、骨太の議論を勘案した内容としなければなりません。
要望書を手交し、道下事務局長がその内容について説明すると、公共交通のあり方について意見交換が行われました。参加議員からは「経営安定基金のあり方が最大のテーマだ」(荒井顧問)、「高速道路網と在来線の関係が重要だ」(矢上座長)、「働いている人の未来を支えて欲しい」(道下事務局長)、「足下、コロナ禍で更に打撃を受けている鉄道を守りたい」(森屋事務局次長)といった発言がありました。これに対し、鳩山政務官は「長期的視点に立った支援が必要」「優秀な人から辞めていくことなどあってはならない」などと応じました。
【今回の要望書の内容】
1.新型コロナウイルス感染症拡大による影響に鑑みた支援を行うこと。(一部JR全体含む)
(1)固定資産税等の免除、整備新幹線貸付料・新千歳空港施設使用料・本四架橋使用料等の免除
(2)緊急経済対策で講じられた納税猶予制度の特例について次年度の追加支払いを発生させないための措置
(3)鉄道需要につながる観光需要喚起策の推進
(4)感染症拡大防止対策への支援と、公共交通としての安全性についての周知広報
2.国鉄債務等処理法に基づく支援が2020年度末で期限を迎えるため、21年度以降の支援措置の実施にあたっては、これまでの支援措置をさらに拡充し切れ目なく継続するなど、当該三社の経営自立の将来像を明確にした上で税制面も含めた必要な支援を行うこと。
3.地域のすべての関係者とともに持続可能な地域公共交通・物流ネットワークを構築し、各社が責任ある事業運営を行うことができる事業領域を明確化すること。
4.北海道、四国における取り組みを通じて、人口減少・少子高齢化社会の進展を見据えた、人流・物流ネットワークの将来的課題の解決につなげること。
5.持続可能な社会を目指すにあたり、世界的にも鉄道貨物の必要性・重要性が認識されつつあることに鑑み、JR貨物とJR6社等の将来を見据えた支援を行うこと。
(1)新たに経営分離される並行在来線の維持と貨物調整金の適用
(2)自然災害による鉄道網の寸断における早期復旧体制の構築や代行輸送時の経費の支援など、激甚災害を想定した鉄道輸送網の強化
(3)国鉄改革スキーム(貨物調整金、線路使用料算出ルール、運行管理ルール)の恒久化を含めた制度のあり方の早期検討