枝野幸男代表は14日、政府が新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づき47都道府県に発令していた緊急事態宣言について、39県で解除することを決定したことを受け、記者団の取材に応じました。 冒頭、枝野代表は「多くの皆さんが1日でも早く、感染が広がる前の普通の生活を取り戻したいと期待をしている中であるので、このこと自体は基本的に歓迎をしたい」と述べる一方、感染拡大のリスクや医療崩壊のリスクがなくなったわけではなく、制限が解除される地域でも、さまざまな社会経済活動の制約を受ける状況は続くとして、解除の地域のみなさんに対しても感染拡大防止のため、改めて協力をお願いしました。
また、政府に対して第2次補正を遅くともこの国会中に成立させることを引き続き求めるとともに、本予算、第1次補正と2度にわたり野党が予算編成を組み換えるよう要求したにも関わらず、対応が後手に回ったことを重く受け止め、野党の提案に真摯に耳を傾け、命と暮らしを守るために必要な内容が組み込まれた2次補正の編成を強く求めました。
緊急事態宣言の解除にあたっては、感染者数が再び急激、大幅に増加し、いわゆる第2波第3波となり医療崩壊などの危機の状況を作ってはならないとして、万が一の場合には、躊躇なく再宣言をすることも政府に求めました。
さらに、こうした状況を作らないために(1)必要な人が待たずに検査を受けられる体制(2)陽性と判明された方が速やかに入院またはホテル等に隔離ができる体制(3)防護服等の物的装備を含め、医療崩壊を防ぐための体制強化――を徹底するよう、改めて強く政府に求めました。
そして、こうした体制が本当に確保されるか否か、感染が拡大傾向に転じた場合にしっかり把握できるか否かなど、現場における情報が迅速かつ正確に集約されなければならないが、こうした面が不十分であったことを真摯に反省し、一日も早い体制を整備することも強く求めました。
記者からの主な質問とその回答(要旨)は以下のとおりです。
Q:今後、解除が残ったところが解除に向け、どのようなことが必要か
とにかく感染が減る。感染状況が一定の水準以下に落ちないと、解除できない。人口10万あたり0.5人という一定の目安が示されたので、そういう状況が確保されるかどうか。そのためには早期の発見と隔離が重要。
さらに申し上げると、医療機関や介護施設など、いわゆる集団感染が発生しやすい、リスクの高いところでは、例えば京都で出産予定の妊婦さんに全員一律でPCR検査をするなど、医療関係や介護・保育などの現場で前広に行っていくことを迅速に進めるべきである。
Q:先日の予算委員会で「官から民への転換」とポストコロナ社会の社会像を示すべきだと発言されたが、どういった社会像をこれを機に訴えていきたいか
一貫してこの10年ぐらい『互いに支え合う社会を作っていかなければならない』と(言ってきた)。「自己責任で、政府はできるだけ小さい方がいい、そして競争至上主義で」では社会は回っていかない。
それはいい時にはいいけれども、まさにこうした社会全体が危機に直面した時には、その脆弱さが明確に現れるし、結果的にそのことによって経済などにも大きな打撃を与えていく。
『支え合い』というのは、人間にとって一番大事な命の問題。医療であり、あるいは命を育むという保育であり、そして老いていった時でも、しっかりと生きていけるという介護である。こうした医療・介護・保育というケアをしっかりと『官』というか『公』の力で支え合う構造をしっかりと作っていく。
もう1つは、国際協調の下ではあるが、やはり地産地消的な社会と経済にしなければならないと、今回改めて突きつけられた。もちろん国際協調が前提ではあるが、マスク、防護服、医療関係器具で顕著になったように、すべてを国際分業に委ねてしまった時に、いかに大きな影響を受けるか。
農業などの一次産業については、生産をしたが消費が足りないことで問題になってるが、世界的なパンデミックが長期化した場合には、国際的な食料の奪い合いになりかねない脆さを世界は抱えている状況の中で、しっかりと一定程度は経済の目先の合理性、効率性だけではなく、近い所で生産をして近い所で社会が回っていく社会を作っていかなければならないと、従来からずっと申し上げてきた。
ずっと言ってきた社会が、やはり必要なんだということが、残念ながらこうした機会に裏付けられたので、さらに力強く、そうした社会への大きな転換を訴えていきたい。
Q:2次補正に言及されたが、安倍総理は先程の自民党臨時役員会で5月27日を目処に閣議決定をする方針を伝え、今国会での成立と目指すとのこと。求めていきたいスピード感と内容を教えて下さい
私は1次補正が少なくも成立した時点から2次補正について当然準備を進めているものと思っていた。
その時点では当然、緊急事態の延長が視野に入っていたので、1次補正だけでは足りないことは明らかになっていた。そうしたことを考えると2週間遅いと言わざるを得ない。それでもギリギリ今国会中には何とか進めていただきたい。
中身は挙げればキリはないが、1つは1次補正からこぼれている家賃、そして学生。3つ目には持続化給付金など事業継続のための制度があまりにも貧弱であり、しっかりやっていく。4つ目は医療に対する支援。これはコロナに直接当たっている皆さんに対する支援と同時に、それ以外の診療科もコロナの影響を受け、倒産・廃業などの危機が今、急速に広がっている状況なので、そうしたことを食い止めることも含めた医療への支援。5番目は、各自治体(への支援)。地域により状況が相当違っているので、今回、解除できた・できない違いや、家賃の補助といっても東京と地方都市では金額水準が違うので、そうした意味で国がしっかりとベースを支えること。これが決定的に足りない。地方に対する交付金の水準がまったく足りない。
大きなところでは、この5点をしっかりと求めていきたい。
Q:検察庁法の改正で、明日の内閣委員会で森まさこ法務大臣の出席が決まり、また検察OBの方々が反対を表明するなどの動きもあり、こうした一連の動きに対しての受け止めを
森大臣が出てくるのは当たり前のことで、ニュースでもなんでもない、出てこなかったことがニュース。犬が人間を噛んでもニュースではないが、人間が犬を噛むからニュース。森大臣が検察庁法の質疑に出てくるのは、犬が人間を噛んだのと一緒。ニュースでもなんでもない。
検察庁OB、しかも検事総長を務められた方など、おそらく、いわゆる政治的な意見・考え方などは、例えば私などとは大分違ったりすると思うが、まさに今回の問題がそうした問題ではなく、制度として主義・主張を超えた民主主義のベースになる権力分立原則(の問題)。その1つ大きな柱である検察官の独立性という社会の根本問題。
主義・主張を超えたベースが覆される問題であることを、まさに当事者の経験に基づき、ご指摘されていることは、大変重く受け止めなければならないと政府に求めていきたい。
Q:関連で、検察庁法で政府与党側が明日以降、強行採決という手段に打って出てきた場合、解任や不信任という考えはあるか
いま多くの皆さんから声をあげていただき、われわれはそうした皆さんの声を受け止め、採決をさせない、採決をする前提として検察庁法の改悪部分を切り離すことを求めている。最後までその実現に向けて努力したい。