衆院本会議で29日、菅総理の所信表明演説に対する代表質問が行われました。共同会派を代表し、立憲民主党の福山哲郎幹事長が登壇。福山幹事長は(1)日本学術会議、(2)アベノミクス、(3)新型コロナと経済、(4)外交政策、(5)エネルギー政策、(6)前政権の不祥事、(7)社会的な価値観――等に関するテーマを取り上げ、菅総理の見解をただしました。

日本学術会議

 日本学術会議の任命問題について福山幹事長は、吉田茂、中曽根康弘といった元総理らの発言や歴史的な史料を引用した上で、「今般、6人を任命しなかった行為は、吉田総理の言う、まさに制肘(せいちゅう)を加えんとする行為であり、甚だ遺憾だ」と断じた上で、解釈変更がなされたのか総理の見解をただすとともに、元総理らの言葉を凌駕する明確な根拠や説明を求めました。

アベノミクス

 菅総理が所信表明演説の中で「アベノミクスは今後も継承し、さらなる改革を進めていく」と述べたことについてただしました。GDP成長率、インフレ率がともに政府目標を下回ったこと、内部留保が463兆円に拡大したにも関わらず労働分配率は逆に下がったこと、増えた働き手の多くは非正規労働者、中高年、女性であったこと等を取り上げた上で、菅総理がアベノミクスの何を継承し、何を改革していくつもりなのか、ただしました。

新型コロナと経済

 新型コロナウイルスが国民生活に与えた影響の大きさについて、実質GDP、個人消費がともに3割近く落ち込み、(1)緊急小口資金等の特例貸付の累計支給件数が約120万件と、東日本大震災時の年間約7万件を大きく上回っていること、(2)全国で1カ月400人程度の利用だった住居確保給付金の申請が、現在10万件を超えていること、(3)野党が上限額の引き上げ等を要望し、実現した雇用調整助成金特例措置の申請件数が約170万件あり、支給決定額は1兆9千億円に上ること――等を取り上げた上で、今回の新型コロナウイルスによる経済的被害は、「日雇い、派遣、契約、アルバイトなどの非正規労働者など、ぜい弱な生活基盤の人に、より大きなダメージが生じている」と指摘。「『自助・共助』で生活できる範囲を超えているとは思われませんか」「逆に今こそ、政治が必要とされているのではないでしょうか。まさに公助の出番では」と問いかけ、総理の認識をただしました。

 この他、検査体制・医療機関への支援、予備費、ひとり親世帯への給付金、公共交通の維持に資する支援策、スポーツ振興、ライブ・エンタテイメントへの支援――等のテーマを取り上げました。

 とりわけ、ひとり親への支援策については、「年内に、低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金の2度目の支給を、(7兆円近く残る)予備費を活用して実施してはどうか」と提案しました。

外交政策

 日中・日朝関係、北方領土、敵基地攻撃能力、沖縄振興、辺野古移設、核兵器禁止条約――等のテーマを取り上げました。

エネルギー政策

 温暖化ガス2050年実質ゼロ、原子力発電、石炭火力発電、福島第一原発の処理水処分――等のテーマを取り上げました。

 気候変動に関しては、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」を政府が表明したことについて「一歩前進と受け止めている」とした上で、「『2050年温室効果ガス排出実質ゼロ』と整合的な目標を、国連に再提出すべきではないか」とただしました。

前政権の不祥事

 森友問題で公文書改ざんを強いられ、自ら命を絶った近畿財務局職員のご遺族が求めている、経緯の再調査や公務災害認定に関する情報の開示について取り上げました。

社会的な価値観

 選択的夫婦別姓、世帯単位ではない社会のあり方、性暴力被害者支援法案・LGBT差別解消法案――等について取り上げました。

 橋本聖子男女共同参画担当大臣が、選択的夫婦別姓の検討方針を男女共同参画基本計画に盛り込みたいと発言していることに関して、野党が2018年通常国会に提出し、棚上げ状態が続いている「選択的夫婦別姓法案」を一日も早く審議、成立させるよう求めました。また同じく、すでに国会提出している、「LGBT差別解消法案」および同性の当事者間による婚姻を法制化する「民法改正案」の成立も求めました。

結党の理念

 質問の冒頭、福山幹事長は、菅政権の発足と時を同じくして150名の仲間とともに新立憲民主党を結党したことについて触れ、「『時代の要請』だと感じている」と述べました。そして新党が目指す理念として(1)一人ひとりの日常の暮らしと働く現場の声に立脚した、多様性を認め合い、差別のない、お互いを支え合う社会を作る(2)過度な自己責任論に陥らず、目先の効率性だけにとらわれず、格差を解消し、一人ひとりが幸福を実感できる社会を作る(3)安倍、菅内閣とは対極の、公文書管理と情報公開を徹底し、透明で公正な信頼される政府を作る(4)アベノマスク、給付金の遅れ、PCR検査が増えなかったことなど行政の劣化が露呈する中で、実行力のある機能する政府を作る(5)立憲主義を重んじる――の5つを挙げました。

 そして「立憲民主党は、国民の信頼に足る政党として政権選択をしていただけるよう、一人ひとりのあなたの現場の声に寄り添い、命と暮らしを守り、『あなたのための政治』を実現していく」と、その決意を表明し、質問を締めくくりました。