枝野幸男代表は7日、国会内で記者会見を開き、次期総選挙での政権公約の第1弾として、「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」7項目を発表。「政権が代われば何が変わるのか、初閣議だけでもこれだけ変わる。現時点で国民の皆さんの関心も高く、明確にお約束ができる7点を選ばせていただいた。誰がやるかで政治は変わるということを、国民の皆さんに知っていただきたい」と述べました。

 枝野代表が会見で発表したのは、(1)2021年度補正予算の編成(2)新型コロナウイルス感染症対策司令塔の設置(3)2022年度予算編成の見直し(4)日本学術会議人事で任命拒否された6名の任命(5)ウィシュマさん死亡事案における監視カメラ映像ならびに関係資料の公開(6)「赤木ファイル」関連文書の開示(7)森友・加計・『桜』問題真相解明チームの設置――の7項目です。

政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項.jpg

 今年度補正予算については具体的に、新型コロナウイルス感染症の感染防止と事業・生活支援のため、緊急かつ当面の手当として、新しい持続化給付金など、少なくとも30兆円規模の補正予算について概要を用意するよう、泉健太政務調査会長と江田憲司経済調査会長に指示をしており、まとまったときにはあらためて発表するとして、そこでの方針に基づいて初閣議では財務大臣および各省に指示をすると述べました。

 新型コロナウイルス感染症対策の司令塔については、官邸に、総理直轄で官房長官をトップとする新たな指令塔(仮称:新型コロナウイルス対応調整室)を設け、その下で権利と役割を整理するとともに、専門化チームを見直して強化すると表明。「従来から申し上げている『仮称:危機管理・防災局』を作るには一定の時間がかかる。この対応調整室を中心とした司令塔で目の前の危機に対応した上で、感染状況が落ち着いてきたところで、これを機管理防災局に発展をさせたい」との考えを示しました。

 来年度予算の編成については、「すでに概算要求が出ているが、今進んでいる国民生活に寄り添っていない時代錯誤の予算編成は抜本的に見直さざるを得ない。したがって、概算要求を抜本的に見直すことを決定し、指示をしたい」と述べました。

 また、名古屋入国管理局で収容されていたウィシュマさん死亡事案における監視カメラ映像ならびに関係資料については、「ご遺族にまず全面的にご覧をいただいた上で、ご遺族のお許しがいただける部分については全面的に公開をしたい」、森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、改ざんを強いられて命を絶った近畿財務局職員、赤木俊夫さんが改ざんの経緯を記録した文書「赤木ファイル」については、「ほぼ全面的に公開をすることがこの問題の真相究明の第一歩になると思っている」、森友・加計学園問題、『桜を見る会』問題真相解明チームについては、「政府としてチームを作ってあらためてきちんと調査を行う。われわれの考える、公文書管理と情報公開の基準に基づいて対応する」とそれぞれ説明しました。

 そのうえで、今回はあくまでも初閣議で調整なく、指示決定が明確にできることついて示したと強調。例えば、立憲民主党が目玉公約の1つとして掲げる予定の、「選択的夫婦別姓」については、実現に向けての必要なプロセスがあるとして、同日の発表には至らなかったと述べました。

DSC00042_20210907_2736.JPG

 質疑応答でこれら7項目を実現するには衆院選挙での勝利が前提となるため、あらためて決意を問われた枝野代表は、「2010年代にはなかなか2大政治勢力によって政権を競い合うという構造が作れなかった。そういう意味では国民の皆さんに大変申し訳なかったと思っている。しかしこの4年間で明確に、自民党か立憲民主党かを国民の皆さんに選択していただける状況は作れたと思っているし、それ以外の政党の皆さんともいろいろな意味で連携協力を進め、ご尽力をいただき、まさに二者択一をしていただける状況を作れたと思っている。今の国民生活の疲弊、コロナに対する政府の対応ぶり、そしてこの約10年の間、政府の味方なのか敵なのかというような形で、国民すら分断されてきた。こういう状況は一刻も早く止めなければならず、そのためには政権を代えるしかない。政権を代えるのが私の責任だと強く感じている。必ずそれを実現したい」と力を込めました。

 また、野党4党が憲法53条に基づき求めている臨時国会の召集については、「政府は憲法に基づく国会の召集要求に対しては開会しなければならない、召集しなければならない義務を負っている。その憲法上の義務を果たさなくていいはずがない」と政府・与党の対応を批判。「ましてや今、自宅に放置されている、十分な医療を受けられずに自宅で亡くなられている感染者の方、飲食店にとどまらず倒産の危機にある、さまざまな業界の皆さんがいらっしゃる。こうした皆さんの状況を把握し、今迅速にやらなければならないことは何なのか、国会でしっかりと議論をする必要がある。われわれは、例えば持続化給付金や、困窮状態にある皆さんに対する給付金を支給するよう国会に法案を出しているので、そうしたものを審議していただきたい。そして、財源の裏付けが足りなくなる予備費の積み上げも具体的に提案をしている。今の国民生活を守るため、そして憲法上の義務を守るため、政府与党は国会を開かなければ、それは国民に目を向けていないことだと強く指摘をしていきたい」と述べました。

DSC00064_20210907_2758.JPG

 福山哲郎幹事長は代表の会見を受け、その後定例記者会見を開き、「2021総選挙遊説基本方針」や、最後の1県となっていた鹿児島県総支部連合会の設立など常任幹事会での承認事項を報告。

 その上で、菅総理が自民党総裁選への不出馬を表明したことに関し、麻生財務大臣が「(新型)コロナ(ウイルス感染拡大)はまがりなりにも収束し、まっとうしたという思いがあったのだと思う」と発言したことに触れ、「驚いた。全国の自宅療養者の数は約13万、重症者の数は全国で2200人を超えている。東京にいたっては自宅療養者の方と入院調整している方が約2万人で、重症者の数は約1100人。重症病床率はなんと約95%になっている。感染者の数は若干減少傾向にあることは私も理解するが、一方で東京も全国的にも一定の比率で重症者が出ている。医療体制はまだ目立った改善がなされた状況ではなく、非常にひっ迫している状況だ。収束というのは、さすがに認識を改めていただかなければいけない。政府はこのような認識だからこそ、臨時国会を開かないのかと言わざるを得ない」と苦言を呈しました。「総裁選で29日まで、まだ3週間以上政治空白ができてコロナ対策等々をしないのは、コロナ対策に専念をすると言われた菅総理大臣のご発言とも矛盾する。われわれとしては、あらためて国会開会を要求したい」と強調。「コロナの感染を不安に思う、また飲食店も含めて事業など厳しい状況の方が全国にたくさんいらっしゃる。緊急事態宣言が長期化するなか、こうした国民の皆さんの事業や生活の手当をすることが政治の役割だ。抗議の意味も含めて、麻生財務大臣の発言には遺憾の意を表明したい」と述べました。

 IR・統合型リゾート施設の事業をめぐる汚職事件で、収賄と証人買収の罪に問われた秋元司衆議院議員に東京地方裁判所が懲役4年の実験判決を言い渡しました。秋元衆院議員は、2019年12月に逮捕されて以後、事実上国会議員としての活動ができない状態が続く一方で、5000万円程度の歳費や期末手当などが支給されていたこと、あわせて自民党では政治とカネをめぐる不祥事のたびに「離党」という手段で対処をし、十分な説明責任が果たされていないことについての受け止めを問われると、「まず、現職の国会議員が逮捕され、そして実刑判決を受けたことに衝撃を受けている。そして、いまだに国会議員を続けていることに対して怒りすら覚える。このことを自民党が放置していること自体、自民党の統治能力がいかにないかを表していると思う。一日も早く国会議員を辞職するべきだ」とコメント。加えて、河井元法務大臣、その妻の河井案里元参院議員、菅原一秀元経済産業大臣と、政治とカネの問題については、有罪が確定した議員が何人もいるが全て離党。何のけじめもつけないまま衆院選挙に突入することについて、自民党の責任も強く問われる」「歳費の問題についても、今国会ではこうした不祥事を起こした議員に対する歳費をどう扱うかという議論をしているが、これも与党がなかなか乗ってこないという状況がある。歳費が支払われることも極めて遺憾に思う」などと述べました。