唐突な衆議院議員任期延長と自衛隊憲法9条への明記、強烈な違和感

    立憲民主党,長妻昭政調会長は8日の記者会見で、憲法9条への自衛隊明記に関する論点整理を自民党に指示した岸田文雄首相の姿勢に「強烈な違和感」を表明した。9月に迫る自民総裁選で保守派の支持を得る思惑があるとの見方を示し「夏休み最後の日に宿題をしているようだ。憲法がもてあそばれている」と批判した。公明党に対しても、考え方が自民とは違うと指摘し「よく連立政権を組めるなと思う」と皮肉った。公明の北側一雄副代表は会見で「自民の議論の行方を見守りたい」と説明。自身が幹事を務める衆院憲法審査会では、緊急事態時の国会議員任期延長に比べて自衛隊明記の議論が「十分に熟していない」とも述べたーー「共同」。 

    9条への自衛隊明記は20175月の憲法記念日に合わせる形で安倍晋三首相が打ち出し、東京五輪が開催される20年の改定憲法施行を呼びかけた。だが与党内で公明党に慎重論が強く、進展はなかった。現在、衆院憲法審査会では自公に日本維新の会、国民民主党などを加えた41会派が、緊急事態時における国会議員の任期延長を中心に条文案の作成に入るよう提案している。立憲民主党、共産党は反対姿勢だ。国民の賛同を得やすいテーマだと推進側はみているようだ。だが憲法には参院の緊急集会の規定がある。任期延長が時の政権による恣意(しい)的な運用で行使され、国民の投票権が制限される恐れなど問題は少なくない。さらに9条改定となれば、戦後の平和国家としての針路が根底から変質しかねないテーマを国民に問うことになる。9月の総裁選日程をにらんだ月内の論点整理など拙速の極みだろう。首相は改憲が「先送りできない課題の最たるものだ」と言うが、なぜ急ぐべきなのか多くの国民が納得できる説明はない。憲法は国家権力の乱用や人権侵害を防ぐために国民が権力をしばるためのものであり、権力者がご都合主義的に改定論議を主導するのは慎むべきだ。最高法規に手を加えようとするなら、最低限必要なのは政治への信頼である。自民党派閥の裏金問題で国民の不信感が極まった今の岸田政権にそれがあるとは到底言えまい――「北海道」社説。

PAGE TOP