衆院本会議で岸田総理による「G7首脳会合に関する報告」とそれに対する質疑が行われた。立憲民主党・無所属を代表し西村智奈美幹事長が、(1)停戦交渉(2)国際社会への働きかけ(3)核共有(4)原発攻撃(5)ロシアへの経済協力等(6)ウクライナ避難民の受け入れ――等について、総理の見解をただした。
(1)ロシアの核兵器による威嚇および核共有論
悲惨な戦争のさなかに、非現実的な防衛論議があるのは、極めて残念、核拡散防止条約、非核三原則、米国・周辺国の反応、軍事的合理性の観点それぞれから「核共有論」についての日本政府の見解をただした。
これに対し岸田総理は、わが国においては非核三原則の堅持や、原子力基本法をはじめとする法体系との関係から認められず、議論を行うことは考えていないと答えた。
(2)原発攻撃
西村幹事長は、ロシア侵攻では、チェルノブイリ原発やザポリージャ原発が攻撃対象となったことから、原発は外国からの武力攻撃に対応できるのかと質問。ロシアの原発への攻撃を踏まえて、日本の安全保障を考えれば、日本の取るべき道は脱原発の加速だと述べた。岸田総理は、「武力攻撃が発生した場合には、日米で共同して対処することとなる。日米同盟の抑止力、対処力を強化し、わが国に対する武力攻撃が発生しないように取り組んでいくことが重要」だと述べ、安全保障体制と事業者規制の両面から原発の安全を確保していく考えを示した。
(3)ロシアへの経済協力等
来年度予算に含まれているロシアへの経済支援について、人道支援と言いながら「モスクワで200名の肥満予防プログラム」は今本当に必要な予算なのかとあらためて問題視。「予算は国家の意志であり、政権の意志。そこに『ロシアへの経済支援』が入ることは、国際社会の大きな誤解を招かない」。
さらに安倍政権の対ロ外交について、「『固有の領土』との表現を取りやめるなど原理原則を曲げ、経済協力を推進した挙句、成果を出せなかった安倍政権には、結果責任がある。ロシアの不当なクリミア侵攻の後も友好姿勢を維持し、経済協力を進めたことは、結果としてプーチン大統領に誤ったメッセージを送った」と指摘、岸田総理の考えを尋ねた。岸田総理は、当該予算事業は、「今後の事態の動向や国際的議論の展望を現時点で予断を持って判断するのは困難。予算の執行については、今後の状況を踏まえて判断していく」と答弁。安倍政権の対ロ外交については、「領土問題を解決し平和条約を締結するとの方針のもと交渉を進めてきたもの。プーチン大統領に誤ったメッセージを送った可能性があるとの指摘には当たらない」と、述べた。
(4)ウクライナ避難民の受け入れ
西村幹事長は避難民の受け入れに関し、立憲民主党が渡航費用・入国後の暮らしの確保・長期化する場合に備えた支援などについて政府に提言し、29日に「戦争等避難者」という特別の在留資格を定めた議員立法を提出した。「ウクライナ避難民を受け入れるにあたって、こうしたベース部分の整備も早急に行う必要がある」と述べ、総理の見解をただしたが、岸田総理は「取り扱いは国会で議論いただけるものと考えている」と述べた。
「一刻も早い戦争の終結に向け、日本政府が最大限の力を尽くすことを強く総理に求める」と述べ、質問を終えた。(3月31日)