吉田議員は法案についての質問とともに、性被害は魂の殺人とも言われていることから、性被害者に全面的に寄り添い、継続的な精神的サポート体制の構築を説き、さらに犯罪者を罰するだけではなく、国として性犯罪は断固として許さないというメッセージを広く社会全体に知らしめるよう求めました。
本法律案は、近年の性犯罪をめぐる状況に鑑み、適切に対処できるよう刑法及び刑事訴訟法を改正し、所要の法整備を行おうとするもの。(1)強制わいせつ罪、強制性交等罪などを統合し、構成要件を改めて不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪とする(2)若年者の性被害の実情に鑑み、現行法で13歳未満とされている、いわゆる性交同意年齢を16歳未満とした上で、13歳以上16歳未満の者に対しわいせつな行為、または性交等をした、当該者の5歳以上年長の者についても不同意わいせつ罪または不同意性交等罪として処罰することとする(3)若年者の性被害を未然に防止するため、わいせつの目的で16歳未満の者に対し、威迫・偽計・利益供与等の手段を用い、面会を要求する行為等を処罰対象とする罪を新設(4)性犯罪の被害申告の困難性等に鑑み、公訴時効期間を5年延長するとともに、被害者が18歳未満の場合には、18歳に達するまでの期間に相当する期間、更に公訴時効期間を延長する――ことなどを軸としています。
吉田議員は、不同意性交等罪が適用されるためには、暴行・脅迫や心身の障がいなど8つの要件のいずれかに該当し、かつ「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」であることが必要との法案の内容を紹介した上で、「不同意」「同意していないこと」を表明した場合、要件をクリアしなくても、不同意性交等罪または不同意わいせつ罪に問われるということで良いかただしました。
齋藤法務大臣は、「同意しない意思を表明することはできたとしても、各号に掲げる行為・事由またはそれらに類する行為・事由に該当した上で、それらにより同意しない意思を全うすることが困難な状態に陥ったと認められるのであればこれらの罪が成立する」と答弁しました。
吉田議員は、不同意性交等罪の要件の一つにある、「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」について、「憂慮」は主観によって差が生じる可能性があり、新たな司法判断のばらつきが生まれると指摘。地位関係性を利用した処罰規定の見直しを検討すべきだと指摘しました。また、13歳以上16歳未満の者に対するプラス5歳までは例外とする規定について、必要性を問いました。
いわゆるグルーミング罪と呼ばれる「わいせつの目的で若年者を懐柔する行為に関わる罪」が新設されることに関連し、「トー横」や「グリ下」に集まる子どもたちを支援しているのはNPOや支援団体だと指摘。「このような人の善意頼みでは限界がある」として、政府として、予算をつけ、実態調査をし、支援要員を配置するなどの具体的な対策があるかただしました。
谷国家公安委員長は、少年の非行の原因の究明や必要な支援を行っているとした上で、引き続き「児童相談所やNPO等の関係機関としっかり連携して対応するよう警察を指導してまいります」と述べるにとどまりました。
吉田議員は、子どもへの性犯罪の再犯率は85%と非常に高いことが明らかになった(法務総合研究所研究部報告55)とした上で、こども家庭庁が、「日本版DBS」(保育士や教員、部活動のコーチ、塾講師など、子どもにかかわる職につく者への性犯罪加害履歴がないかどうかをチェックする仕組み)の導入に向けて取り組みをすすめているとの報道を取り上げ、現状について問いました。また、特別支援学校や福祉施設などで働く職員にも対象を広げるべきだとして、政府の見解を求めました。
小倉こども政策担当大臣は、こども家庭庁の専門チームにおいて導入に向けた検討を進めているとして、現時点で導入時期が定まっているものではないとしつつも、「できるだけ速やかに導入できるようしっかり取り組む」と答弁しました。対象職種の範囲については、「今後、法的論点の整理等と併せて検討を進めていく」と述べました。
吉田議員は、公訴時効期間の5年延長について、法務省がその根拠として内閣府調査を元にしていることを取り上げた上で、そもそも相談もできなかった方が女性では約6割、男性では約7割いることを指摘。公訴時効の撤廃を求めました。
齋藤法務大臣は、「現行法上、公訴時効の対象とならない罪は、侵害されると回復の余地のない人の生命という究極の法益が侵害され、かつ罪の重さを示す法定刑として最も重い死刑が定められている殺人罪等に限られている」と述べ、「性犯罪は被害者の尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続ける悪質な罪ですが、侵害されると回復の余地がない生命を侵害する罪とは異なり、罪の重さを示す法定刑に照らしても死刑が定められている殺人罪等と同等とまでは言い難い」と説明し、「公訴時効を撤廃する事とはいたしておりません」と答弁しました。