衆院予算委員会で「令和6年能登半島地震等」の集中審議が行われ、泉健太代表が質疑に立ち、(1)被災者、被災地の声を聞く重要性(2)被災者生活再建支援金などの引き上げ(3)水の問題(4)プッシュ型支援(5)被災地の福祉施設の事業継続(6)空路の確保――等、被災地の現状と課題を指摘し、政府の姿勢をただしました。
(1)被災者、被災地の声を聞く重要性
冒頭、泉代表は、被災者本人の生の声を聞く重要性を指摘しました。
泉代表は、被災地で起きている目詰まりとして「2次避難先で家賃が基準内の物件を見つけたが、対象物件ではなかったためにまた一から物件探しが必要になった」ケースや、「災害救助法においては、炊き出しは『行政が何かしらの食事を提供するか、できない場合は、食材を提供できる』となっている。役所の職員が食材が持っていくことが『提供』であって、地域住民が食材を買いに行って調理しようと思ったら『提供』に当たらないこともあるので、なかなか難しい」という現地の困惑の声、「トイレトレーラ―は給水が大変で、飲用水は余っていてもトイレには使えないとのことなので、一旦ポリタンクに詰め替えて、給水タンクが去ってから、こっそりと入れている」などの具体例をあげました。
その上で、泉代表は「地域住民の判断に委ねてほしい。役所からミニ霞が関がくるだけではだめ。被災者、避難所のニーズにあわせて、皆さんの判断に委ねて、柔軟な運用を認めていただきたい」と訴えました。
(2)被災者生活再建支援金などの引き上げ
被災者生活支援法に定める支援金について泉代表は「額を引き上げたい」と訴え、その理由について「(被災者生活支援法ができた)2004年から物価も高騰している。建設費が高騰している中で、生活再建支援金の額は20年間変わっていない。再建支援は居住する場所に限定されている。自動車、物置、蔵は対象になっていない」と述べました。その上でさらに、阪神・淡路大震災を契機に議員立法を制定したが、閣法で額を引き上げた経緯もある。政府と国会議員の両方が関わっている法律である。公明党代表も金額をあげる可能性はあると発言したことにも触れ、「額の引き上げについて、超党派で議論を開始したい」と訴えました。
岸田総理は「改めて現地の声を聞くことの大事さを感じている。地元の判断が大事。国からも応援を送り込み、現地での判断、対応につなげていく。被災地で住宅を再建するための経済的支援の在り方は、従来からさまざまな指摘をいただいている。被災地のニーズやその実情、現下の経済情勢に鑑み、効果的な対応をしていかなければならない。追加的な支援を総合的に検討したい」と述べ、政府としても被災者生活再建支援法の改正について前向きな姿勢を表明しました。
(3)水の問題
七尾市の水道の復旧が4月以降と公表されていることについて、泉代表は「前倒しできるのではないか」と政府に求めました。その理由として「4月以降というメッセージは、被災地に相当なダメージを与える。(水道の復旧が4月以降なら)七尾を離れなければならない、事業をたたまなければならない、となる。下水道事業団、地元の建設業者の力で、予想以上に作業が進んでいる。年度内の復旧に希望をもっている」と述べました。
(4)プッシュ型支援
泉代表は「2次避難や1.5次避難が進むと被災地の避難所は閉所になり、残った住民へのプッシュ型支援が止まり始めている。地域住民が減った中で、残された住民だけでは生活をする物資を入手できなくなる。移動販売車を確実に送ってほしい。物を買える環境を作ってほしい」と求めました。
(5)被災地の福祉施設の事業継続
泉代表は、能登半島にある障害福祉施設について「1.5次避難が進むと、利用者が減り、収入が減る。目先の減収が起きている。それが故に施設から避難させにくい。緊急時の費用は補てんしてほしい」といった全国の社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉教育を行っている学校で組織する日本ソーシャルワーク教育学校連盟からの声を紹介し、激甚災害指定を受けた地方公共団体が行う災害復旧事業等への国庫補助のかさ上げを「可及的速やかに実施してほしい」と政府に求めました。
岸田総理は「状況の回復を見ながら、自治体が主体となって、国が支援するプル型支援に移行していく。その先に、事業継続できる状況を作っていく。過去の対応を踏まえ、国庫補助率を引き上げを考えていきたい」等と発言しました。
(6)空路の確保
泉代表は、災害対策における航空機の活用について、自治体地域防災計画において「航空機による輸送」が「地上輸送がすべて不可能な場合」と書かれていることがあり、陸路が完全使えない場合のにみ空路が使えるとと読めてしまうと指摘し、「陸路優先主義をかえてほしい」と求めました。
予算委員会の質疑終了後、記者団の取材に応じた泉代表は、「岸田総理は意外と権限が発揮できていないのではないか。しかし総理も何らかの措置は取りたいという感じは受けた」と感想を述べた上で、被災者生活再建支援法に基づく支援金について「しっかりと増額する方向に持ち込んでいきたい」と述べました。
水道の復旧状況については「県や国が公式発表しているよりも、もう少し地域住民に希望を持ってもらえるような状況が生まれてきている。被災者の方々が被災地で希望を失わない、心が折れてしまわないよう、情報発信に努めてもらいたい」と要望しました。
また、被災現場での政府の取り組みについて、「ミニ霞が関を地元の役所や県庁に作るのではなく、現地の避難所だとか、集落の住民たちに権限や裁量を与えることが大事だ」と指摘しました。