枝野幸男代表は17日、党の山口県連と衆院山口1区総支部が共催した時局講演会にオンラインで参加し、講演をおこないました。

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左から小田村県連代表、大内総支部長、坂本総支部長

 冒頭、講演会に先立ち開催された山口県連大会で新しく代表に就任した小田村克彦県議会議員があいさつし、山口1区の大内一也総支部長、3区の坂本史子総支部長を紹介しました。

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山口県連 戸倉副代表

 副代表に就任した戸倉多香子県議会議員が司会を務めました。

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 枝野代表は講演の冒頭、「山口県は前総理の地元ということもあり、全国の中でも厳しい状況だが、そのような中で頑張ってきていただいている皆さんに心から感謝と敬意を表したい。いよいよこの政治状況を変えることができる選挙が10月3日の可能性が高いのではないかということで準備を進めたい。何とかこの選挙で政治を変えないと回復困難なところまで日本の社会が行ってしまうという強い危機感をもって、この総選挙に臨みたい」と述べ、県連関係者の協力・支援を要請しました。

■新型コロナウイルス対策

 新型コロナウイルス感染症は、首都圏や大阪周辺で感染拡大の第5波に入っているとの認識を示し、「私たちが1年半にわたって言い続けていることをもっと早く政府が実現することができていれば、こんなひどい状況にはならなかった。相変わらず一部の人は、『野党は批判ばかり』と言うが、この感染症対応については、私たちは当初からかなり明確に、自信をもってもう一つのプラン、もう一つの政策を具体的に提案してきたという自負がある。残念ながらそれを政府に受け入れさせることができなかった。国民、有権者の皆さんに申し訳ないという思いを強く抱いている」と述べました。

 その上で、政府の3つの間違いとして、(1)水際対策(2)検査(3)営業制限を要請した事業者への補償――を挙げ、それぞれについて立憲民主党が提案してきた政策を説明しました。

 また、今の政府に、危機管理に対応するだけの能力と感覚が欠けていると指摘しました。自身が官房長官を務めた10年前の東日本大震災・東京電力福島第一原発事故の際は与野党党首会談を開催していたのに対し、いまの政権では昨年3月上旬に1回だけ開催したことを挙げ、「本来であれば、これだけの国家的危機なので、国を挙げてなんとか対応しようという呼びかけがあり、われわれとしてもそういう場で大事なポイントは提起をしていこうということがあって然るべきだ」と述べました。さらに、今の政府は、直面している危機を本当だと思いたくない正常性バイアスに陥っていることが、感染状況でのオリンピックの強行開催、緊急事態宣言の発令が遅すぎ、解除が早すぎたことなどにつながっていると語り、楽観論に立つ危機管理を改めなくてはいけないと訴えました。

 さらに、いまの政府に司令塔が欠けていることも指摘しました。西村経済再生大臣が営業自粛に協力しない飲食店に金融機関から圧力をかけるような発言をしたり、河野ワクチン担当大臣がモデルナ社製のワクチンの供給が減るのを知りながら、田村生労働大臣に知らせていなかったことを挙げ、「情報を共有せずに物事を決めているので、支離滅裂な対応になるのは当たり前だ」と批判しました。

 その上で、「私たちに政権を預からせていただいたら、ただちに今の感染症に関わっているすべてのチームを再編し、総理をトップして官房長官が実務を担う強力なチームを設ける。そして全閣僚が少なくとも週に一度くらい顔を突き合わせて各省が何を進めているのか、何を心配しているのかを閣僚レベルで共有する。日常的にも各省の局長くらいのレベルできちんと日頃から情報交換をする。そして決断。判断できない時は総理、官房長官を中心に決断する。こういう司令塔をしっかりつくることが危機管理の基本であり、私は10年前の教訓を踏まえて、その準備はすでにできている」と述べ、まずは感染症の危機から国民の命と暮らしを守る取り組みを進める考えを示しました。

■日本の社会、経済を立て直す

 次に枝野代表は、この国がコロナ危機に対応できていないのは、「この20年から30年の日本の政治のある意味の終着点だ」という認識を示し、中曽根行革以来、競争主義、規制緩和一辺倒で進んできたことが、時代に合わなくなっていると論じました。感染症危機で保健所が機能せず、公立病院を縮小したことで感染症病床の確保が困難になったこと、公務員の削減、非正規化により災害時に危機管理に対応できる人手が不足していることなどを例に挙げました。そして、この構造を変えていくことが今の日本社会にとって必要なことだと訴えました。

 経済状況について、物やサービスを売る供給側の効率や競争を高めることも大事だが、日本経済、特に地方経済が低迷し、疲弊しきっている原因は消費する側に消費する力がないからだと主張しました。どんなに良い商品もサービスも、お金がなくて買えないから、どんどん値下げし、そのために賃金を抑えたり、雇用を減らしたりしなくてはいけなくなり、所得が減る人、仕事を失う人が出てきて、ますます物が売れなくなるという悪循環が、日本でこの10年くらい起きていると説明しました。

 一方で多くの人がほしいものが手に入っておらず、高齢者は安心できる医療や介護、若い世代では保育や放課後児童クラブなどの子育て支援サービス、質が高くきめ細かい教育などを求めていると指摘しました。

 こうした日本社会の構造を改めるために所得の再分配を自信をもって進めたいと提起しました。所得が多くゆとりのある大企業や個人からもう少し多く税金を納めていただくとし、特に株式の取引に関する税率を見直す考えを示しました。支出を増やす先として、医療、介護、保育・放課後児童クラブなどの現場で働く人、非正規の公務員、児童相談所やハローワークの職員、消費生活相談員など多くの人から必要とされるサービスを担っている方々の賃金を引き上げる考えを示しました。「もともと雇用が不安定で低賃金だった皆さんの所得を押し上げ、この人たちは不足しているサービスを提供してくれるだけでなく、それぞれが地域において、増えた所得を消費に回す。そこからいい循環に立て直していきたい」と説明しました。

 また、農林水産業について、「後継者が見つからず、また所得も不安定である中でご苦労をされている。国内で一定の食料を自給すること、あるいは水害防止の観点からも森林をを守ることは、日本社会において不足しているサービスであり、そういうところにしっかりと資源の再分配をする」と表明し、農業者戸別所得補償制度の仕組みをさらにバージョンアップして、地域の社会を支える水と緑と空気と土を守っている皆さんの下支えをしっかりしていくことを提起しました。これは、消防や警察、裁判所、自衛隊などお金だけでは測りきれない価値を持つ仕事に携わってい人たちにお金を出しているの同様に、農林水産業に従事する人にお金を出していくことは、都市で生活している人にも理解が得られると説明しました。

 枝野代表は「必要なサービス、必要な事業をしっかりと提供できる、そこにお金を配分する。そのことを通じて不安定な働き方、所得の低い人の所得を押し上げる。そのことで国内でしっかりと消費が活性化していく。そういう社会をつくっていくことができれば高齢者の皆さんの老後の不安、若い皆さんの子育てや教育に関する不安、そして不安定な働き方という現役世代の不安――さまざまな不安を小さくしていけるから、経済を活性化していくことができる。私たちにはこうした明確なビジョンがある。30年にわたって違う方向に向いていたことを今こそ変えていきたい。そして変えるチャンスだと思っている」と語りました。

 中曽根行革と同時期のサッチャー政権の後はブレア政権、レーガン政権の後はクリントン政権、オバマ政権が揺り戻しの政策を実施してバランスをとっていたの対し、日本ではクリントン大統領が就任した年に発足した細川政権、オバマ大統領が就任した年に発足した鳩山政権ができたが、残念ながら短期間で終わってしまい、30年間ずっと一辺倒でやってきたことが、日本の社会と経済をだめにした大きな原因だと解説しました。その上で、「今年アメリカでバイデン大統領の民主党政権ができた。そして、今の自民党が大変な体たらくなので政権交代の大きなチャンスを迎えている。まさに過去2回の例にならって、今回は3度目の正直でしっかりと政権を取らしていただき、今申し上げた方向にしっかりと社会の方向性を切り替えていく。そのことを自信をもって進めていきたい」と表明し、この大きなテーマを実現するためにともに戦っていこうと呼びかけて講演を終えました。

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 大内総支部長は、目下の感染症危機を「乗り越えていかない限り日本の未来はないと感じている。安倍政権から続く嘘とごまかしがコロナ対策でも続いている」「政府は国民や事業者のことを考えていない。そういったことを変えていかなければいけない」

 2017年に山口に戻り、活動してきた大内総支部長は「次は小指の爪で引っかかってでも当選し、皆さんの暮らしや事業、生活やこの国を支える運営をしっかりとしていきたい」「コロナが来る前から日本は大変な状況で、2018年から景気が後退し、30年前から賃金が下がり続けている。北欧もアメリカも上がっていて、日本だけが実質賃金が落ちている。こういう状況をしっかり変えるためにも今の政治を変えていく。山口は日本一、野党にとっては厳しい県だが、あきらめずに全力で頑張っていきたい」と決意を表明しました。

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時局講演会に先立ち開催された山口県連定期大会の様子
https://cdp-japan.jp/news/20210718_1814