新型コロナウイルス対策本部と会派厚生労働部会は21日、合同会議を国会内で開催。(1)ウガンダ選手団の1人がコロナ陽性だった件(2)専門家有志による「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に伴う新型コロナウイルス感染拡大リスクに関する提言」――について、それぞれ政府(内閣官房、オリ・パラ事務局、厚生労働省)から話を聞きました。
ウガンダ選手団の1人がコロナ陽性だった件をめぐっては、19日、大阪・泉佐野市で事前合宿のために到着したウガンダ選手団9人のうち1人が成田空港のPCR検査で陽性だと確認。1人は入国できませんでしたが、他の8人は貸し切りバスで移動、現在は泉佐野市の判断で当面、練習を控えてもらっているとのことです。
冒頭、新型コロナウイルス感染症対策本部の逢坂誠二本部長は、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会ら専門家有志による提言について、「日本国内で専門家集団が自由闊達にものを言えない状況になっているのではないか。タイミングも、内容も政府に慮る、政府の考えに沿う形で専門性をにじみだす状況になっている。こんなことでは本当の意味では専門性を発揮できない」と懸念を表明。「国民の命と暮らしを守る対応になっているのか、いまの段階で検証することが必要。ぜひ活発な議論をいただきたい」と呼びかけました。
厚生労働部会の長妻昭部会長は、政府は水際対策で外国人の新規入国を原則認めていないにもかかわらず、その例外が東京五輪・パラリンピック関係者だと指摘。選手に対しては、本来必要な2週間の待機も免除するという例外措置を取るなか、ウガンダ選手団の1人が陽性だと判定、残りの選手団が移動していることを問題視しました。
また、オリンピックの開催をめぐる動きを「日本中に覆っている無理が通れば道理引っ込むという、1つの現象ではないか」と警戒。「国会は閉じられたが、引き続きこうした会議を開き政府の対応をチェックし提言を続けていく」と力を込めました。
「選手と同行の8人は濃厚接触者ではないのか」「8人は空港に留め置くべきだったのではないか」。会議ではまず、政府の水際対策の甘さを指摘する声が多く上がりましたが、政府の答弁で明らかになったのは、当該選手らが濃厚接触者か否かを判断するのは、受け入れ先の自治体であるということ。空港の検疫は、あくまでも入国者が陽性か陰性かを判断するだけであり、陰性であれば即ち入国、陰性者が濃厚接触者に当たるかどうかといった判断は、入国後に受け入れ先の自治体がおこなうものだと説明。あわせて、入国後、十分な感染対策を取った上で現地への移動を含め厳正な管理をおこなうのは自治体の責任だと述べました。今回の件については、厚労省が航空会社に機内の座席などを確認し、泉佐野市に情報を提供、泉佐野市で8人が濃厚接触者にあたるかどうかを判断することになると強調しました。
自治体に丸投げともいえる政府の説明に出席した議員はあ然、「『ざる』どころかフリーパスではないか」との声も上がりました。東京五輪・パラリンピック開催となった場合は、選手だけで1万人、関係者を合わせると5万人超が入国することになり、特にメディア関係者は、一般人との交わりなど行動管理の徹底が難しくなるのではないかとも指摘。政府は、メディア関係者に関しては、5月までの実績として取材者(技術関係者でなく)は原則通り14日間の待機をさせていたと話すものの、今後の対応については不明だと述べました。陽性となったウガンダの選手は、今月15日にワクチンを接種していたことから、「ワクチンの効果が発揮されてから入国とすべきではないか」との意見もありましたが、政府は「ワクチン接種は現状入国の要件ではない」と回答。また、PC検査については現在のルールのもとで72時間以内前に1回実施していたと話し、今後は出国前96時間以内に2回の検査を予定していると説明しました。
長妻部会長は、オリンピック選手も例外なく原則の14日間待機を。少なくとも、同行選手団のなかに陽性者が出た場合には留め置くなどといった方針に転換すべきだと要望。逢坂本部長は、「いまの時点で対策を打たないと大混乱になる」と述べ、こうした問題意識を踏まえた対応を検討してほしいと求めました。
専門家有志による提言については、「観客数について、現行の大規模イベント開催基準よりも厳しい基準の採用」など、ここでの要望を踏まえた判断がなされるのかをただしましたが、政府の答弁は、同日夕に開かれる5者会議で方針が定まると述べるにとどまりました。専門家たちが示す大会に伴う人流増加による新規感染者の推移、最悪のシナリオをどう認識しているのか。「国民の命と健康を優先」と言いながら、開催ありきで進んでいる政府の対応を問題視し、この提言に対する見解を次回会議までにまとめるよう求めました。