立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党の4党は22日、コロナ禍で困窮する子育て世帯を支援するための「子どもの貧困」給付金法案(正式名称「児童の属する低所得者世帯に対する緊急の支援に関する法律案」)を衆院に提出。その後、子どもの貧困問題を支援する3つの民間団体とともに記者団の取材に応じました。
立憲民主党からは、泉健太政務調査会長と法案提出者である逢坂誠二新型コロナウイルス感染症対策本部長(法案筆頭提出者)、川内博史政務調査会長代行、山井和則議員、重徳和彦議員(子ども・子育てPT副座長)、大河原雅子ジェンダー平等推進本部長、岡本あき子議員(子ども・子育てPT事務局長)、山川百合子議員らが参加しました。
冒頭、同法案の筆頭提出者である逢坂議員から、法案提出に至った背景について説明がありました。逢坂議員は、「新型コロナウイルスの感染は、緊急事態宣言地域であるなしに関わらず、さまざまな地域、業種に広がっている。事業をされている方々はもとより、以前から収入の厳しい状況の中で頑張っておられた方々に、より深刻な影響が出つつある。コロナ禍により、子ども達の未来を壊してはいけない。なんとしても子ども達には明るい未来に向かって成長して頂きたい。昨年末、(野党の要望で)ひとり親世帯への追加給付がなんとか年内に実現した。年が明け、卒業・入学という、子育てをする家庭にとって大変お金のかかる時期を迎える。コロナ禍の中で卒業や入学を迎える子ども達につらい思いをさせたくない――そういう思いを込めて今回、低所得世帯の子ども達にお金を給付するという法案を野党各会派でつくらせて頂き、ただいま衆院に提出をしてきた」と述べました。
泉健太政務調査会長からは「やはりこのコロナ禍が、かなり格差を広げているということ、そして実は困っている方々には、恐らく世の中が考えているほど支援が届いていないということ。また困窮に置かれている方々の生活環境は非常に多層的で、さまざまなところにひずみが出てきているということ。そういったことに鑑みて、今回はひとり親に限らず、本当に困っている方々に、使って頂きやすい給付金をお届けすることに主眼を置いた。非常にスピード感が問われる政策だ。まだまだ予備費も使い切っていない中、政府にはぜひ本当に必要なところへの支援というものを迅速に出していただきたい。法案成立のため、与党にも協力を呼びかけるとともに、国民の皆さまの応援を頂きたい。今回、多くの団体の皆さまとともにこの法案を作ることができたのは、『市民とともに立法していく』というわれわれの姿の一つの象徴であると思っている。今後も、当事者の皆さん、団体の皆さんを大事にして法案作りをしていきたい」との発言がありました。
また提出者の一人で、会見の進行を務めた山井和則衆院議員からは「8月にはひとり親への第1回目の給付金支給が実現したが、この時は『まずはひとり親の支援を』ということで2人親世帯への支援は先延ばしになった。昨年末の2回目の給付の際にも、『どうしても支給を年内に間に合わせなければならない』ということで、2人親世帯は後回しになった。しかしわれわれのところにも支援を求める多くの声が、2人親世帯からのものだ」と、今回の法案の提出までの経緯について説明がありました。その後、山井議員から「本日、来て頂いた3つの民間団体は、政治的には、純粋に中立的な立場であることについて誤解のないようにして頂きたい」との説明があり、子どもの貧困問題を支援する3つの民間団体の代表から、それぞれ発言が続きました。
公益財団法人あすのば代表理事の小河光治さんからは「去年ひとり親世帯に対して2度の給付がありました。本当に命を助けることができたということだと思います。この時にも野党の皆さんが共同で法案を提出していただいて、それに政府与党もご一緒になって、党派を超えて、これを実現していただいたということに心から感謝しています」と、国会への感謝の言葉が述べられました。また今回の法案提出のポイントについて、「ひとり親はもちろん大変なのですが、ひとり親のみならず2人親世帯も大変だということです。去年の6月にわれわれが行った緊急支援では、受給者の4人に1人が2人親世帯でした。こうした世帯には、自分自身を責め、声を上げられない人も多い。こういった方々にぜひ光を当ててほしい。入学新生活を迎えるこの時期こそぜひ実現をしていただきたい」と、あいさつがありました。
NPO法人キッズドア理事長の渡辺由美子さんからは、「われわれが行った調査によると、2人親家庭の方がむしろ大変な状況だ。公共料金を支払えなくなったり、貯蓄がほとんどなかったりする家庭の割合は、2人親世帯の方が多いくらいだ。こうした2人親世帯は、家庭内に不登校の子や障がい者を抱えていたり、多子だったりするケースも多い」との説明がありました。また「われわれが支援を行った東日本大震災の津波被害の際には、被害が可視化されており、1年後にご飯を食べられない人というのは見当たらなかった。しかしこのコロナ禍では、1年経っても食べ物や必需品を買えない人々がいる」として、団体に寄せられた実際の声として「子どものノートが買えない」「死にたい」といった言葉を紹介。「一刻も早く救いの手を差し伸べないと大変なことになる」と強い危機感を訴えました。
シングルマザーを支援する団体代表のA(仮名)さんからは、「前回、(ひとり親家庭への)2回目の給付金の際には『(電気なしの)真っ暗なお正月を避けられた』『おかげで子どもの長靴が買うことができた』『一旦取り崩した子どもの進学資金の穴埋めができた』『子どもの制服を新調することができた』といったさまざまな切実な思いが、給付金の受給者から寄せられた」「児童扶養手当は別居中なのでもらえないが、なんとかしてやりくりしているというような方もたくさんいらっしゃいます。ひとり親、2人親という線引きがあるわけではない。困窮されている世帯に広く目を向けていただきたい」といった発言がありました。
立憲民主党から法案提出に参加した議員の主な発言(発言順)
山川議員「コロナ禍においては、最も弱い立場にある方々へのしわ寄せが最も大きく現れるということが言われる。本当に今こそ政治が動かなければいけない」
川内議員「菅総理は『国民の命と暮らしを守るために、ありとあらゆる方策をとる』と仰っている。私どもが提案したこの法律にぜひともご賛同頂き、子どもたちの未来を、しっかりと守っていくことに協力して頂きたい」
岡本議員「なんとか年を越せたものの、受験や入学を迎える今の時期、お金の工面に困っている家庭も多い。今、困っている人に支援を差し伸べるのが政治の役割だ」
重徳議員「暖かい支援の手を差し伸べることに与野党の違いはない。野党こそしっかり政府の尻を叩いていきたい」
大河議員「困窮しているのはひとり親に限らない。声を挙げられない人が多数いる。政府支援の対象を拡大し、子ども達を守っていく」
山井議員「法案を成立させ、3月までに支給しようとすれば、タイムリミットはあと2、3週間しかない」
20210120②「子どもの貧困」給付金法案(概要資料).pdf
210121 児童の属する低所得者世帯に対する緊急の支援に関する法律案要綱.pdf
210121 児童の属する低所得者世帯に対する緊急の支援に関する法律案.pdf