参院本会議で26日、政府提出の「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」(産業競争力法改正案)の趣旨説明がおこなわれ、「立憲民主・社民」会派を代表して、宮沢由佳議員が質問に立ちました。

 冒頭、宮沢議員は「3月8日の予算委員会において菅総理に、ひとり親だけでなく、困窮しているふたり親世帯にも早急な支援をお願いし、3月16日、関係閣僚会議において、ふたり親を含む低所得の子育て世帯に対し、子ども1人当たり5万円の特別給付金支給が決定されたが、低所得ふたり親世帯への給付がまだ届いていない」と指摘し、立憲民主党が1月22日に「『子どもの貧困』給付金法案」を提出しているが、それに賛同せずに支給を決断しなかった政府の対応の遅れを強く批判しました。
 また、立憲民主党は令和2(2020)年度子育て世帯生活支援特別給付金と同様の給付金を速やかに支給するために「『子育て世帯給付金』再支給法案」を今国会に提出する予定だと述べ、田村厚生労働大臣に再給付を強く要請しました。

 産業競争力法改正案の条文の誤りへの対応について、「今般の条文等の誤りの原因と再発防止策、さらには過度に法案を束ねることの弊害はないのか」と述べ、梶山経済産業大臣の見解をただしました。梶山大臣は「条文の確認が不十分だった」と陳謝しましたが、「束ね法案の弊害はなかった」と否定しました。

 続いて、法案における事業計画制度の見直しのあり方について、多数の事業計画制度のうち、たとえば産業競争力強化法の「特別事業再編計画」は、制度ができてから1件の実績もなく、下請中小企業振興法の「振興事業計画」は、1970年以降、12件の承認実績にとどまっていると指摘しました。そのうえで、案における全ての事業計画制度について、事業者のニーズに合ったものであるのか、わが国の産業競争力や生産性向上に資するものであるのか、もう一度検証すべきと主張しました。また、「国際経営開発研究所IMDによる日本の競争力総合順位は産業競争力強化法が成立した2013年に24位、2014年に21位になったが、2019年に30位、2020は34位に低下している」と懸念を示し、有識者や国民からの多様な意見を集めるための仕組み、パブリックコメントが重要であると梶山経済産業大臣に進言しました。

(1)産業競争力強化法の改正について
 「カーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現に向けた事業者の計画認定制度の創設等について、投資促進策などを盛り込んだことは評価する」と述べ、対象となる設備や投資対象について、梶山経済産業大臣に確認しました。梶山大臣は投資促進策として税額控除10%措置を提案し、投資対象として、パワー半導体や生産工程の脱炭素化支援を想定していると答弁しました。
 宮沢議員は「カーボンニュートラルを達成するには、今後二酸化炭素排出量の多い石炭火力発電をどう位置づけるのか、避けては通れない課題だ」と主張し、G7気候・環境相会合に参加した梶山大臣と小泉環境大臣の見解をただしました。
 梶山大臣は石炭火力支援の理解を海外政府に求め、理解を得たと答弁。小泉大臣は「石炭火力支援について『原則として支援しない』というコンセンサスを得られたのは画期的だ」と語りました。

(2)DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた事業者の計画認定制度の創設等について
 「今般の認定制度は企業のDXへの意識を高めるとともに、具体的なアクションを狙ったものだと思うが、制度だけつくってもダメ。DXが進まない背景にある企業の意識や抱える課題を正確にくみ取る必要がある。制度設計に当たり、企業の事情に寄り添った丁寧な議論は行われてきたのか」と政府のこれまでの取り組みの効果が上がっていないとし、計画認定制度を新設した狙いや意義について梶山大臣の答弁を求めました。

(3)バーチャルオンリー株主総会について
 「法案によりバーチャルオンリー株主総会が実施可能となり、上場会社に限って認めることとしている。必要性は上場会社に限ったことではないと思うが、上場会社についてのみ、その実施を許容することとした理由は何か。デジタル化を推進するならば会社法を改正し、全ての企業にバーチャルオンリー株主総会を開催する手段を提供することも検討すべきではないか」と梶山大臣と上川法務大臣の見解をただしました。
 上川法務大臣は会社法の見直しや必要な手段を検討していく考えを示しました。

(4)電子提供による債権譲渡通知等の第三者対抗要件の特例について
 「法案では、債権譲渡の債務者への通知に関し、経済産業大臣の認定を受けた情報システムによる債権譲渡通知等について、一定の要件の下、第三者対抗要件を具備したとする民法上の特例を設けることとしている。具体的に、どのような情報システムを通じた債権譲渡通知等に対して、特例を認めることとしているのか。当該特例が、善意の債務者による新旧の債権者に対する二重払いや詐欺等の犯罪行為を誘発してしまうおそれはないのか」と問題提起し、梶山大臣の説明を求めました。

(5)下請中小企業振興法の一部改正について
 「法案において、下請中小企業振興法が対象とする取引類型について、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、特に経営基盤のぜい弱性が明らかになったフリーランスを含む個人事業者との取引を同法の振興対象に含めることができるよう規定ぶりを改めることとしている。同法の対象取引類型を拡大することについて、どの程度のニーズがあり、また、どのような政策効果が期待できると考えているのか」と述べ、梶山大臣の認識をただしました。

(6)中小企業の強みを活かした取引機会等を創出する者の認定制度の創設について
 「法案では、中小企業の強みを活かした取引機会等を創出する、下請中小企業取引機会創出事業者が、経済産業大臣の認定を受けることができる制度を新設することとしている。認定対象と想定される事業者はどのような事業者を想定しているのか。認定事業者が下請企業の弱みにつけ込むことがあってはならない。認定の要件はどのようなものになるのか。さらには、公正取引委員会とどのように連携していくのか」と問題点を指摘し、梶山大臣の見解をただしました。

■結びに
 宮沢議員は「この法案は日本の産業競争力を強化する上で全てを否定するものではないが、政策に対する検証や反省が不十分ではないかと考える。また、政府の対応が後手後手、その場しのぎ、決断が遅くなっているのではないか。適時に必要性、計画性に基づいた政策を行わないと国民が振り回される。今回どのようなエビデンスに基づいて、この法案を提出されたのか」と苦言を呈し、質問を終えました。

産業競争力強化法改正案に対する質問(予定稿).pdf

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