【石川】「学ぶことは生きること」自主夜間中学の設置に取り組む方々と枝野代表が意見交換

金沢市議会議員の喜成清恵さんの呼びかけで、喜成さんと共に自主夜間中学の立ち上げに参加している人や関係者が20人ほど集まり、枝野幸男代表を交えて意見交換を行いました。(取材日:10月3日)

 第一部では、岡山市で自主夜間中学の運営を行っており現役中学校英語教諭でもある城之内庸仁さんをゲストに迎え、夜間中学の現状について話を聞き、第二部では喜成さん、城之内さん、枝野代表の3人がパネラーとなり、なぜいま夜間中学が必要とされているのか意見を交わしました。

■学ぶことは生きること

 「学ぶことは生きること」だと語る城之内さんは「交通標識の文字が読めなかったらどうでしょう。中身の分からない液体が入ったコップに読めない言葉でラベルが貼ってあっても、それが『水』なのか『毒』なのか『薬』なのか分からない。言葉ができないことで生活そのものが脅かされる。毎日が不安と心配の連続です。引きこもりの方に『外に出よう』と言っても、なかなか出れない。外に出ると、どうやっていいのかわからない。学びを必要としている人が本当に多くいます」と訴えました。

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 「夜間中学は時代とともに変化をしていて、戦後間の混乱期は戦争孤児や昼間は働きに出なければいけない人が中心。1970年代から80年代は、中国等の残留孤児や、当時は登校拒否と呼ばれていましたが不登校で「形式的」に中学校を卒業した人(形式卒業者。不登校や病気などで学校に行かないまま形式的に中学校を卒業した人のこと)が増えていきました。90年代に入り外国人労働者や国際結婚等で外国につながりのある方が増えていきました。

 夜間中学は、さまざまな理由で小学校や中学校に十分に行けなかった方や、もう一度学び直しをしたいと考えている方が学ぶ場所。少なくとも各都道府県に1校は設置するよう、2016年に夜間中学の設置を促す教育機会確保法が成立、翌年には施行されましたが、公立の夜間中学は8都府県31校から、現在まだ3校しか増えていません。そして『公立』は一定の入学の条件(形式卒業者は入学ができないなど)があるので、漏れた人のために『自主』が必要。『公立』と『自主』は自転車の両輪です。

 そして日本には読み書きができない人はいないと多くの人が思っていますが、実はそうではないんです。ユネスコの識字調査には先進国のデータがそもそもありません。2010年の国勢調査では義務教育未修了者が少なくとも12万8千人いることが分かりました」

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■夜間中学の設立に向けてどうすればいいか

 第二部では、喜成さん、枝野代表も加わり3人で意見交換を行いました。

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枝野代表「自主夜間中学を始められたきっかけは、何だったんですか」

城之内さん「きっかけは、山田洋次監督の夜間中学を舞台にした映画『学校』。映画を見た時は公立のイメージしかなかったものの、2011年の東日本大震災で学習支援のボランティア活動をしている中で、福島で自主夜間中学を運営している方と出会い、自主でも出来るんだと知りました」

喜成さん「石川で来年の2、3月を目標に自主夜間中学の設立準備をしています。きっかけは運営している子ども食堂での出来事。形式卒業者の人がご飯を食べにきていて、中学校は卒業したもののなかなかアルバイト先が見つからないって言うんです。履歴書を見せてもらったら、書かれていたのは名前だけ。経歴はもちろん、住所も書くことができていなかった。

 そんな折、元文科省の前川喜平さんの石川での講演の中で夜間中学について触れていて、その後、ネットで調べて城之内さんの岡山での自主夜間中学の取り組みを知り、視察にも何度か行かせてもらい、決心しました。

 行政の人と話すと、『夜間中学を必要としている人は存在していない』という雰囲気を感じます。子ども食堂の運営と同じで、実際にやってみると金沢で18カ所、石川県内で57カ所ができた。行政に必要なものだと認識してもらえるよう、私たちがニーズ調査を行い、活動していこうと思います」

城之内さん「公立夜間中学の設置には、そうしたプロセスが結局は一番の近道かもしれない。一方で、今年開校した茨城は首長が作ると言ったらすぐにできました。埼玉では、何年もずっと自主で運営されていて2016年の法律が後押しとなって首長が作りました。

 つまり茨城や埼玉のように、学校の設置者である首長が決めればすぐに出来ることもあります。国会議員は学校は作れないので、法律整備や予算の面で支援をして欲しいですね」

枝野代表「知事選挙や政令市長選挙の公約に盛り込むようにプッシュしていくことで進む余地が十分ありますね。まずは『自主』のないところに支援をするよう働きかけをしていくことも必要ですね」

■夜間中学には遠方から通う人も

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喜成さん「北海道や東北、東海、北陸、四国、九州エリアには1校もないというのが現状ですが、岡山で一番遠くから通っているのは、どこからですか」

城之内さん「島根と奈良から通っています。香川をはじめとした四国や島根、鳥取の日本海側からも来やすいので立地としては岡山はいい場所だと思います」

喜成さん「実は、金沢で準備しているこの場所も、裏にすぐ駅があります。福井や富山からも学びに来てくださいって言える環境で準備をしたかったんです」

城之内さん「夜間中学ではいろいろな人が学んでいて、学校の卒業証書が欲しいから学んでいるおばあちゃん、遺書を書くためというおじいちゃん。奥さんにラブレターを書きたいというのがきっかけで通いはじめた男性もいます。

 ある不登校だったら生徒は、勉強しているおばあちゃんの姿を見て、卒業式の3日前から通うようになり、ちゃんと卒業式にも出席しました。高校生になって広島に引っ越したのですが、いまでも1、2カ月に1度は来てくれています。

 一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で2カ月間休校を余儀なくされました。学ぶことが困難だった人は一度休むと戻りにくく、生活に困窮している人は学びにくる力が削がれています」

■夜間中学はベーシックサービス

喜成さん「昼間の学校についていけなかったことを卑下するのではなく、いろいろな学び方の機会やタイミングが用意されていることが当たり前の社会にしていきたいですね」

枝野代表「字が読めたり、四則計算は生きていく上で不可欠のもの。一般の義務教育で提供できないのであれば、できなかった部分に責任を持つのが基本。間違いなく夜間中学はベーシックサービス。しかも、他の事業と比べ金額が少なくてもできる。病気で義務教育を受けられなかった方などはどうしようもない。そういった方は必ず常にいます。家庭の事情なども自己責任ではないですよね」

城之内さん「ある時から急に自己責任という言葉が出始めました。結局、置き去りにされている人たちがこんなにもたくさんいるというのが国に届いていません。85歳になるおばあちゃんは、公立の学校ができるのであれば選挙でもなんでも行くし、広めていくと言ってくれています。このおばあちゃんは最初、選挙に行きたがらなかったんです、字を書かないといけないから。出来る人だけを見つめる政治であってはいけないと思います」

■会場の参加者の思い

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 会場には、父の影響で夜間中学や子ども食堂に興味を持ち参加したという高校生や、「自分も子ども食堂や夜間中学を通じて恩返しをしたい」と語るフランス出身で子ども食堂の活動をしている会社員も参加。

 現役の中学校教員は、「学校現場には、いろいろな背景の子どもたちがいて救いきれない現状がある。卒業後もどこかでつながりができるように送り出すことを目標にしているが、つながりが切れてしまう家庭もある。過去にいろいろできなかったことの反省を含めながら、少しでも力になれたらと思って参加しています。

 次の世代を背負う子どもたちに勉強だけではなく、世の中の見えていない部分も知ってもらいたい。そして学校の教員の意識も変えたい。そうした思いのなかで子ども食堂や、夜間中学に関わっています」と話しました。

 元中学校教員で肢体不自由、知的障がいの生徒も担当した県議会議員の岡野定隆志さんは「最初の1年目にネグレクトの家庭、不登校の家庭にも出会った。知的に厳しかった子は、自分の名前を読めない、でも自分の名前と同じ字を見つけて丸をもらいたい、すごいねって言われたい。認められたいという姿を見て、根源的な学びの喜びとは何かを感じることができた。読み書きできない方はマイノリティとしてたくさんいる。そうした方の思いをくみ取る、存在を見つけ出すのは政治の仕事として大事だと思っています」と語りました。

 「石川に夜間中学をつくる会」代表で、今回会場を提供していただいたフリースクールの代表の南手さんは、福祉施設も運営していることから、国から届くいわゆるアベノマスクをしながら、こう訴えました。

 「本当に必要なものは届かないけれど、そうじゃないものはわりと届いたりする。国や自治体だけに任せるのではなく、できることをやりましょうと言って動いている。ここはフリースクールで、教材も場所もある。岡山の例も見ながら『実現できるな』と思ってる。石川県の皆さんで力を合わせてやっていきましょう」

■喜成さん、城之内さんから枝野代表へ

喜成さん「自主夜間中学が運営しやすい支援を作って欲しい。すべての国民が夜間中学を認知する社会になって欲しい。党としてもそれを目指していただきたい」

城之内さん「国の中心に近い人と話をしたかった。一番しんどい人がいつも縁の方に恥ずかしそうに、苦しそうにしている。しんどい人の声を届けてもらいたい、これからもいろいろなところで聞いていただきたい。また、施行から3年を迎えた時期なので、夜間中学を国の施策として、もう一歩進めてほしい。もう少し首長がしっかり判断ができ、財政的にもバックアップできるような法律にしてもらいたい」

枝野代表「分かっているつもりだったが、現場の話を聞くと国の政治が全然遅れていることを実感した。夜間中学はベーシックサービス。誰もが学ぶ機会を得られるために不可欠な場。それが知られていないし、位置づけられていないのは恥ずかしいと思う。多くの人たちに夜間中学がいろいろな役割を果たしていることを知ってもらい、それを支えていこうという空気が広がっていくように頑張っていきたい」

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https://cdp-japan.jp/news/20201007_0057

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